記憶にある限りでは、ずっと子供の頃から家では親が朝日新聞を購読していた。「サザエさん」や「フジ三太郎」は毎日のささやかな楽しみのひとつだった。朝日とは長いつきあいだったが、会社の経営などに参画するようになったあるときから必要性を感じて朝日のほかに日経も併読し始めた。しかし、2紙に目を通すのは結構時間がかかる。その後、朝日の内容が鼻につくように感じられるようになり、日経だけにした。それ以後何の不都合もない。むしろ社会・スポーツ面などがコンパクトな日経のほうがいいと今は思っている。
今住んでいるマンションでは圧倒的に朝日を購読している世帯が多く、日経は2軒しかない。僕が日経を読んでいると知っているのかどうかは分からないが、夕方、朝日新聞の拡販員がやってきた。「1万円分の景品をあげるから、朝日をとってほしい」という。景品をえさに勧誘する読売新聞ならまだ分かる。その男の猫なで声にまず腹が立った。同時に、金で人の関心を呼ぼうとする態度に腹が立った。腹が立って余計なことまで口走ってしまった。反省。
朝日新聞社が赤字に転落したというニュースはだいぶ前に知っていたが、矜持をかなぐり捨てたように感じられた。朝日は大丈夫か? 目に見えないところで時代は変わりつつあるのかもしれない。誰も気がつかないだけなのかもしれない。