沢木耕太郎『流星ひとつ』を読んだ。あっという間に読み終えた。全編インタービュー、会話だけで地の文は一切ない。一晩数時間のインタビューを軸に会話だけの内容を本にしたものだが、長い間出版されることはなく封印されてきた。インタビューの相手は藤圭子。内容は彼女が歌手を引退して米国に渡った時のインタビューだから、随分昔の話だ。彼女が再復帰する場合のことを考え、差し障りがあるといけないからと、沢木耕太郎はこの本の出版を認めなかったという。昨年、彼女が自殺して、封印が解かれ、急にこの本が出版されることになったようだ。その随分昔になるインタビューの内容は全然古くない。藤圭子28歳の姿が生き生きとよみがえってくる。
そこでさっそく藤圭子のCDを図書館で借りてきた。「圭子の夢は夜ひらく」が胸に迫ってくる。沢木耕太郎は藤圭子の人生を「凄惨」と言う言葉で表現していたが、僕には「凄絶」という言葉のほうがふさわしいような気がする。