東京では電車の中などでルイ・ヴィトンのバッグを持っている女性を数多く見かける。彼女たちのファッションは,持っているバッグとは全く似合わないことが多い。なぜ,彼女たちが自分の身なりとは無関係にこのバッグを持つのか分からない(シリアスに考えれば分かるのだが,ここでは控える)。
かつて,フランスからベルギーへ向かう列車のファーストクラスの車内で,旅行カバンとハンドバッグをルイ・ヴィトンでそろえていて,有名なメゾンのファッションと思われる装いで身を包んだ女性を見たことがあった。一分のスキもないその装いにはフランスの上流階級の人間の雰囲気が漂っていた。そういう私も30年前にフランスで買ったルイ・ヴィトンのブリーフケースを持っているのだが,この姿を見てから,私はルイ・ヴィトンを持って出歩くことをやめた。
「バッグだけに金をかけたりせずに,もっとほかにやることがあるのではないの」と東京の彼女たちに言いたくなる。