下校する小学生たちとすれ違った。「通学違反!」「通学違反!」と口々に叫んでいた。「先生に言いつける!」「逮捕だ!」などと叫ぶ子もいる。なんのことか分からなかった。少しして気がついた。数人で下校してくる子どもたちの中の2人が脇道に入ったのだった。脇道といってもちょっと一段低い道で、すぐ5mぐらいで元の道に合流する。おそらく、決められた通学路をそれてその脇道に入ったことに対してほかの子どもたちが非難の声を上げているのだろう。
僕が小学生だった頃のことを思い出した。学校を出るときは数人で、田んぼのあぜ道を近道したり、畑を横切ったり、気ままな下校だった。僕は学校からクラスでは一番遠いところに住んでいたから、その後はさらに勝手気ままに道とはいえないところも通って帰宅した。通学路などというものはなかった。考えてみればなんの規制もなく自由だった。田舎だったからだろうか、都会ではそのころからこのような下校風景は日常的だったのだろうか。それとも昔と今の時代の違いなのだろうか。
今の子供たちはおそらくそのような規則に慣れてしまっているから、毎日毎日決まった同じ道を歩くことについてなんとも思わないのかもしれない。僕は思わず「つまらない決まりなんか守らなくていいんだよ」と言ってやりたい気がしたが、思いとどまった。おせっかいでしかないだろう。大勢から逆に突っ込まれるかもしれない。先生に言いつけられるかもしれないし、逮捕されるかもしれない。
しかし、このような「些細な」規則を守る「いい子」たちは、自由な想像力や豊かな発想の育成が阻害されることはないのだろうか。そして将来創造的な発明・発見などをする人間が育つだろうかという疑問も感じたのだった。そして、このような下校風景は世界のどこでも見られるものなのだろうかという疑問も湧いたのだった。