沢木耕太郎のエッセイを読んでいたら、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』というページが出てきた。そこで連鎖反応がおこった。そうだ、かねてからこの映画は観たいと思っていたものだ。早速レンタルのDVDを借りてきた。
僕の感想は沢木耕太郎とは少々異なる。多分沢木はこれまでにキューバ・ミュージックを聴いたことがなかったのだろうとその文章から察した。キューバ音楽のCDはかつてNYで買ってきたから僕には比較的なじみのあるものだった。キューバ音楽は哀しみと明るさがいっしょくたになったような独特の響きで心がなごむ思いがする。
この映画監督のヴィム・ヴェンダースはアムステルダムとニューヨークの彼らのコンサートの場面と、老ミュージシャンの生い立ちの独白を切れ切れにつなぎ合わせて映画を進行させる。余計な感情をいっさい差しはさまないところが、この監督のこの映画に対するこだわりなのだろうと感じられる。そして、ヴィム・ヴェンダースが後ろへ下がれば下がるほど、老ミュージシャンたちが再び表舞台で演奏する喜びと、同時にそれは彼らの生きる喜びでもある笑顔が前面に出てくるのだ。このこともヴィム・ヴェンダースはねらったのだろうと思える。
これほど光輝く老人たちを観たことはない。これほど笑顔にあふれる老人たちを観たことはない。