午後3時すぎ。電車の中で大学生風の若い男が大股開きで座り、デイバッグの中をがさがさかき回してパンを取り出して食べ出した。片手に携帯電話を持って、せわしなく親指を動かしている。思い出したようにときどきパンにかじりつく。その男の様子はどう見ても育ちが悪いとしか見えなかった。このような男を見ることが多くなったような気がする。
列車だと特に長距離列車の場合は飲んだり食べたりする人を見かけるが、これは昔からよく見かける光景で何の違和感もない。しかしこのように横一列に並んだ座席の電車でものを食べる人を見ることはなかった。乗降客の乗り降りがあわただしい電車の中では飲み食いをしないということが、これまではマナーとして社会的な常識だったように思う。
その男は、電車の中であることをものともせず、しかも朝昼晩というきちんとした食事の時間ではないのに夢中で食べていた。人間も社会もしまりがなく、ゆるみっぱなしになってきたということだろうか。あるいは管理社会が進行して世知辛いものになってきたための反動の姿ということなのだろうか。
そういえば電車の中で化粧をする若い女もときどき見かけるようになった。このような男女が年をとって人口に占める割合が多くなり、恥ずかしいと思ったり思われたりすることが少なくなってやがて多数派になる日がそのうち来るのかもしれない。