電車の中で北原亞以子の短編を読んでいた。『深川澪通り木戸番小屋』に出てくるおけいは継ぎのあたった着物にさらに継ぎをあてた着物を着ている。極貧と言ってもいい女の子だ。ふと目を上げると僕の前に女の子が立っていた。ぼろぼろのジージャンを着ている。一瞬、おけいかと思った。
しかし目の前の女の子はコーチのバックを提げていて、ぼろを着ていてもどう見ても極貧には見えない。江戸と平成の時代の落差の大きさを感じた。同時に江戸と平成の女の子の違いは「人情」のあるなしではないかと思えた。電車の中の女の子はおけいと同じぐらいの年代に見えたが、どうみても貧乏な男を追いかけたりはしないように見えた。
江戸の時代は遠い。