今回のバカンスの旅には『老子の思想』(張鍾鍾元著、上野浩道訳、講談社学術文庫)という本も持って行った。バカンスとかリゾートとかには合わない感じもしたが、中国の思想家の中ではもっとも関心の深い思想家なので、つまらない日本の小説などよりもずっと面白いかもしれないと思った。
ヘーゲルやハイデッガーそしてカントやプラトンに言及しながら老子の思想を解説するこの本はプールサイドの暑さを忘れさせてくれた。同時に、これまで僕が理解していた(と思い込んでいた)「老子」はなんと一面的だったのだろうと思った。口には出さなかったが中国の思想の深遠さにうなった。
リゾートでもバンコクでも、プールサイドには経済成長がめざましい中国の人々が多かった。空港でも中国の人たちの存在は他国の人々を圧倒するような感じだった。しかし、彼らには眉をしかめたくなるような行動ばかりが目につく。とても老子・荘子や孔子・孟子を先達として持つ同じ国の人々には見えなかった。不思議な国だ、不思議な国民だ。
老子の思想を完全には理解できないままだったが、傍若無人な中国人たちの振る舞いに腹を立てて帰国したのだった。